第35回
国債と税金どう違う?実は同じです(後編)
更新日:2011年7月6日
第35回
国債と税金どう違う?実は同じです(後編)
前回、国債と税金は財政学的に言えばどちらも税金であり、誰から取るのかという対象が異なるだけだというところまで述べました。しかし、同じ税金であっても取る相手が異なることで経済に与えるインパクトは正反対となります。
税金の場合、政府がお金をむしり取る相手は、消費税なら「お金を使う人」、所得税なら「稼ぐ人」でした。したがって、経済に与えるインパクトというのは、消費税増税なら消費が抑制、所得税増税なら勤労意欲が抑制されることになります。いずれにしてもGDPはマイナスの方向に動くことになります。ただし、税金で集められたお金を使って復興で儲ける人がいるので、その人の分はGDPを押し上げることになりますから、うまくいけばイーブンになると考えられます。ただ、その人たちも消費者ではあるので、消費が抑制される分はやはりマイナスになるかもしれません。
このような状況でもプラスにするためには、復興のためのお金を相当賢く使わないといけません。将来の支出につながるような使い道を考えるということです。しかし今までの政府のお金の使い方を見ていると将来にはつながらないでしょう。例えば今まで公共投資で作ってきたものを考えれば一目瞭然ですね(いらない道路といらない橋、いらない図書館など)。
しかし、これがたとえば、災害に強くなるよう、場所を移転してコンパクトに町を集約するような新たなインフラ作りというところにお金が回るようであればよい兆しとなるかもしれません。それが税金のもたらすインパクトです。
次に国債発行が経済に与えるインパクトはどのようなものでしょうか。
国債の場合、お金を取られる人は「銀行預金を貯め込んでいる人」でした。したがって、政府がインフレ課税を行おうとすると、または行うような予測が立てば、預金をしている人は損をしないようにみんな一斉に預金を引き出して、株や金や不動産に投資をし始めます。そうなるとモノの値段が上がり、ますますインフレになります。
以上を整理すると、税と国債は、国民の財布から政府の財布へお金が移動するという意味では同じものなのですが、もたらす経済効果はまったく逆ということになります。いわゆる税金はどちらかというとデフレ、国債(インフレ課税)の場合はその名のごとくインフレということになります。
こうなると、株式投資においても選ぶ銘柄はまったく正反対になりますね。デフレになるのであればディフェンシブ系、つまり不況に強い、または景気の影響を受けない銘柄がよいということになります。たとえばお菓子・製薬などは景気の影響を受けない銘柄です。つまり、経済はここ20年間の延長となるわけです。
一方、インフレになるのであれば不動産、REIT、その他内需系銘柄となり、たとえば国内展開だけしている小売、建設、ITなどが当てはまります。また、インフレの進行につれて為替が円安に振れるのであれば製造業でもよいかもしれません。
さて、こういった政策は当然経済に与えるインパクトを十分考慮して決められている(考えられている)ものと思いますが、いや、思いませんよね。これまでのコラムで何度か触れているように、自分たち(取る側)にとっての損得が重要なのですから。ということで、税金を取られる国民側ではなく、取って使う側の方々はどちらがよいと思っているのかについても少し触れておきましょう。
取る側その1の役人は税金で取りたいと思っています。なぜかというと、自分たちの予算も権限も増えるからです。デフレになろうが知ったことはありません。
そして取る側その2の政治家は国債で調達したいと思っています。実際は何度も言うように国債も税金なので同じことなのですが、増税すると政治家は悪人と言われてしまい、票が入らなくなるので増税とは言いたくありません。
ということで、取る側では意見が対立するのですが、果たして震災の復興費用はどちらでまかなわれることになるのでしょうか。
この両者のうち、政策に詳しいのは、というより実際に法律の文面を書いているのは残念ながら役人のほうですから、うまくやれば自分たちの思い通りになります。加えて現在のような政治的な混乱は役人にはもってこいです。どさくさに紛れて増税をしようと画策するに決まっています。
したがって、今後菅政権なき後、政治的に安定するかどうかが鍵となります。政治的に不安な状態が続けば一気に増税の方向に向かうでしょう。しかし、万が一でも政治的に強いリーダーシップが出てくれば国債に傾くかもしれません。果たしてどちらになるでしょう。日本にリーダーはいませんから考えるまでもないですかね。
われわれ国民にとっては、自分が預金者、勤労者、消費者のどの割合が高いかでどちらがトクなのか決まりますが、ほとんどの人は勤労所得の割合が高いわけですから単純に考えれば増税より国債のほうがよいということになります。
増税、国債発行で損する人・得する人(お金を取る側編)
・増税したい → 役人(予算と権限が増える)
・国債を発行したい → 政治家(増税と言うと悪人にされる)
ここで、本当のところどちらがよいかを、もう少し大きく捉えて考えてみましょう。
過去の歴史から諸問題が発生するかどうかという観点で見た場合、インフレ気味のほうが政治的・経済的にはメリットが大きいといえます。簡単な話、去年より今年の給料が高いほうが嬉しいでしょう。つまりデフレよりもインフレのほうが国民の満足度が高いのです。極端な上昇でなければ名目の成長率が上がって嫌がる人はおらず、若干のインフレを希望する・許容することになります。ですから、諸外国は数パーセントの持続的インフレがよいと思っており、そうなるような政策を選択しています。インフレターゲットなどはまさにそうです。
したがって若干のインフレになるような政策のほうが望ましいと考えられます。
しかし、これは「日本以外の国」がそう考えているということで、日本は若干の持続的インフレをよしとしていないようです。なぜでしょう。それは簡単です。日本は役人が強いからです。
ここで、さきほどの取る側の理屈を思い出してみてください。役人は自分たちの予算と権限が増える増税がよいと考えており、いってみればこれは積極的にデフレを選択しているということです。そして先に述べたように、残念ながら役人が政治家を思い通りにするのは簡単ですし、何より国民は政治家よりも頭のよいお役人様が大好きなので、役人の思った通りになりやすいという土壌があります。
ですので、日本の経済成長に結びつくような調達の仕方・使い方は期待できそうにありませんね。みなさんはどう思いますか?
株式会社ストック・リサーチ 大和田 智美
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